はじめに
株式会社サクラオブルワリーアンドディスティラリー(以下、サクラオB&D)(広島県廿日市市)は1918年の創業以来、本社のある廿日市市桜尾で総合酒類メーカーとして蒸留酒や清酒、リキュールなど様々なお酒を製造しています。
日本酒「一代弥山」、焼酎「達磨焼酎」は、地元広島をはじめとして長く親しまれているブランドです。
一方で、2017年にはSAKURAO DISTILLERYを設立し、新たな取り組みとしてジン、ウイスキーの製造を開始しました。
そして2021年、シングルモルトウイスキーを発売。
100年以上培ってきた蒸留技術とともに新たな挑戦を続けています。
今回、オンラインで取材に応じてくださったのは、サクラオB&Dで商品開発、品質管理を担う杉原 奈穂様。
サクラオB&Dでnanotyを導入するに至った経緯とその後の変化を伺いました。
目次
【導入目的】紙での製造工数管理をシンプルにデジタル化したい
サクラオB&Dでは、製造現場の担当者たちは毎日の作業時間を紙で記録・提出し、管理職が入力・集計を行っていました。
しかし、入力作業だけで膨大な時間がかかる上に、現場は水を使う仕事であるため、紙での記録は向いていないと感じていました。
「これって紙じゃないといけないのかな?」と、他の若手社員たちと話題にすることもありました。
昨年より品質管理室に所属することになりました。
より製造現場の担当者たちと距離が近くなったことでアクションを起こすことを決意。
紙での管理をデジタルに置き換え、簡単に個人のスマートフォンなどで記録できるシステムを探していたとき、nanotyに出会いました。
nanotyで実現したかったのは、主にお酒の製造現場の工数管理です。
nanotyの「日報明細」は、シンプルな操作で、社員が何時~何時まで、何の業務を行ったかを登録することができます。
これなら、ベテランが多い製造現場の担当者たちも使いやすいのではと思いました。
また、日報明細のデータを案件ごとに自動集計できるので、管理職の負担も減らすことができます。
さらに、1アカウントあたり約500円で気軽にスタートできるのも魅力的。
価格と複雑すぎない機能が導入の決め手となりました。
上司に提案をしてから、試験導入までは2週間ほどで一気に話が進みました。
【成果1】日報明細を活用し、報告事務を10分以内に
nanotyでは、工数管理のために「商品/作業工程」別に案件コードを登録しています。
社員は、個人のスマホや共用パソコンを使い、登録された案件を選んで作業時間を入力します。
以前は、毎日紙の記録を夕方までに提出して帰るのがルーティンでしたが、nanotyでは個人のスマホからいつでも記録ができます。
記入する時間帯のルールは定めておらず、お昼時間に午前分、終業時に午後分と入力する人もいれば、仕事の合間にこまめに記録する人、帰宅後にゆっくり入力する人など、自分のペースに合わせて取り組んでもらっています。
製造現場の社員に、「nanotyの記入に、導入当初と半年経過した今でどれくらい時間がかかっているか」アンケートを取りました。
すると、「5分以内」と回答した社員は導入当初と現在で60%と変わらずでしたが、「10分以上」と回答した方が導入当初は35%いたのに対し、現在は10%以下に。
最初は新しい取り組みに不安な声もありましたが、だんだんデジタルでの入力にも慣れてきた様子。
「選択するだけなので、記入するより楽である」「時間の使い方や効率をより考えるようになった」という声もあります。
日報用紙の準備や保管の必要もなくなり、ペーパーレスも実現できました。
【成果2】管理職の工数管理の時間も半分以下に削減
デジタル化により、記入方法の個人差や記入忘れ・見落としもなくなり、管理職の負担も軽減しました。担当部署の人数分を行っていた工数入力の手間がなくなったことで大幅に時間が削減。入力・集計にかかる作業時間が体感でどのくらい減ったかアンケートを行ったところ「半分以下」「5分の1」という声もあるほどです。
また、従来よりも詳細な項目での集計が可能に。現在は、作業の標準化や正確なコスト計算など、今後成果に結びつける分析をするためのデータを蓄積している段階です。
【成功のポイント】導入時の趣旨説明や操作サポートを丁寧に
製造現場の社員は40~50代がメインで、スマホやデジタルでの入力も慣れていない方も多くいました。
製造現場の皆さんの負担にならないような、シンプルな操作画面であることが前提でした。
新たなシステムを使うことには、誰しも不安を感じます。
そんな時、上司がくれた「いいと思ったことはぜひ進めてほしい」という言葉が後押しとなり、「若手の自分だからできることがある」と自信を持つことができました。
同時に、導入する目的や使い方を、利用する皆さんに十分理解してもらえるような取り組みを積極的にすることが重要であると考えました。
そこで、まずは管理職一人ひとりとじっくり話し、部署にあった設定を探っていきました。
次に、現場に足を運び、製造現場の皆さんに直接新しい取り組みについて説明する時間を設けました。
さらに、入力についてマニュアルを自作したり、一緒にスマホを操作する社内説明会を開催したりしました。
試験導入の時から、困ったときにはnanoty担当の方がメール、電話、チャットなどで細やかに対応してくれて、小さな疑問や不便な点を一緒に解決していただけたのも導入実現の助けになりました。
【今後の展望】蓄積されるデータを活用し、製造コスト分析を
現時点では、煩雑な集計作業の削減やペーパーレスというメリットに満足していますが、今後データが蓄積するにつれて、集計結果をもとにした製造コストの分析など、幅広い視野でのメリットが得られるはずだと考えています。