社内で提出が求められる改善提案。しかし、改善提案とはなにかはっきりと答えられるでしょうか。改善提案とはそもそも何なのか、改善提案書を書くにはどうすればよいのかを紹介します。簡単な書き方も紹介するので、改善提案書で悩んでいる人は参考にしてください。
改善提案とは
企業の業務効率化やチームの組織力向上など多くの目的で使われる改善提案。改善提案が上手くいく組織は成長も期待できるでしょう。しかし、そもそも改善提案とは何なのか考えたことはあるでしょうか。改善提案についてまとめました。
課題の発見
改善提案は業務や組織が抱えている課題を発見するところからスタートします。改善提案は上司やマネジャーといった管理職だけでなく、業務を実際におこなっている現場の人間も提出します。改善提案書は現場を理解している人がボトムアップで仕事のミスの削減や、コストカット、効率アップを目指して提言する報告書です。
課題を発見するためのポイントが、3Mと呼ばれる、ムダ、ムリ、ムラです。例えば不要な作業や人材でムダが出ていないか、作業量や納期にムリがないか、作業量、人件費にムラがないかといった視点でみることによって、現在の業務がどれだけ非効率なものかを明らかにします。
また生産管理や品質管理の仕事では、QCDという言葉も使われています。QCDは「Quality(品質)」「Cost(費用)」「Delivery(納期)」の3つの頭文字。Quality(品質)では、プロセス上のミスや製品の質、Cost(費用)は、人件費や無駄な費用、Delivery(納期)では作業ステップの削減や納期の短期化について見直します。現状を把握してどこに改善できるポイントがあるかを考えるとき役立つ指標です。
業務内容や職種によって課題は全く違います。しかし、どんな仕事であっても改善提案のために職場で抱えている課題を可視化が必要です。まずは改善提案をしなければと考えずに、小さい課題でもたくさん探すようにしてみましょう。普段の仕事で「面倒だな」と感じている内容など簡単なもので十分です。どうすれば面倒でなくなるかを考えてみてください。
さらに、チームでの業務の振り返りや業務の可視化によって見つかる課題も多いはずです。人の意見やマニュアル化などさまざまな意見を参考に課題を発見しましょう。
実現方法の提案
改善提案には、課題を発見するだけでは不十分です。必ずどうやって改善するかを考えなければいけません。つまり、改善点と「どのように実現するか」を示すようにします。改善提案の中には、実現するために予算や上司の許諾が必要なものもありますが、すぐに実行できるものもあるはずです。
特にすぐに改善できるものは、効果が小さいからと軽視しがちです。しかし、1分2分程度の削減であっても積み重ねれば大きくなります。細かいものであってもどうすれば改善できるのかという視点を持つようにしましょう。
改善提案する上でのポイント
改善提案をしているのになかなか実現できない、評価に結び付かないという人もいるでしょう。改善提案をするために押さえておきたいポイントをまとめました。
効果が測定しやすい提案が望ましい
改善提案を評価するポイントは「効果」と「実現可能性」です。改善提案するときには、その改善でどのような効果が期待できるか、どれだけ実現できそうかを考えてみましょう。
特に効果は数値で理解しやすい定量的に測れる要素を指標にすることをおすすめします。作業効率や品質を測るための指標にはいろいろなものがあります。
作業時間や費用の削減、処理件数の増加やミスの削減等は数値で効果が実感しやすいでしょう。また実現可能性についてもできるだけ、定量的な観点で考えます。
つまり、効果が出るまでにかかる時間や改善にかかるコスト、実行するための人的リソースについてシミュレーションしなければいけません。多少の問題があっても効果の方が大きければ受け入れられるでしょう。また、上司や同僚の意見も参考にして工夫して実現できないかを検討してください。
「とりあえず提案してみる」姿勢も大切
せっかく思いついたものの、小さいことだから、ありふれているからと自分で没にしてしまう改善提案もあるかもしれません。また他の人の改善提案を聞いて、自分にもその考えがあったのにと悔しい思いをしたことはないでしょうか。
改善提案は効果や実現可能性を考慮することも大切ですが、「とりあえず提案してみる」姿勢も大切です。提案をとどまっていた改善案はまだ穴があるかもしれません。それでも他の人のアイディアや意見、工夫によって解決できる場合があります。
改善提案の可否は上司が判断することでもあるため、自分で評価せずにまずは口に出してみることをおすすめします。
見つけた課題に優先順位をつける
課題を見つけるために大切なのは、まずはたくさん見つけることです。複数の課題を見つけたら次に優先順位を付けてください。改善提案をするときに、売上アップや無駄の削減といった目的があるかもしれません。
改善提案の目的や目標に対して、どれだけ効果があるのか、実行できそうかどうかといった観点で比較してより優先される課題を見つけます。
改善提案が思いつかない時のネタの見つけ方
改善提案で苦しいのは、どうしても課題や改善策が思いつかないときです。どうしても改善提案が思いつかない時には、どのようにネタを見つけるのかおすすめの方法をまとめました。
過去事例を参考にする
改善提案が思いつかない時には、過去事例や他部署の事例を見てみましょう。改善提案なのに、自分で考えなくて良いのかと疑問に思うかもしれません。しかし、社員が皆改善提案を考えているのであれば、アイディアが似てしまうのは当然です。
むしろ過去事例を参考にして、より使いやすい改善案にアレンジしたり、他部署で成功した事例を使ってみたりすることは、改善への近道です。過去事例や他部署の成功事例があれば、導入へのハードルも低く、効果も期待できます。
テーマを決める
改善提案が思いつかないのは、テーマが絞られていないからかもしれません。改善のテーマが曖昧としていると、具体的なアイディアも出にくくなります。
テーマはどのようなものでも構いません。業務内容で絞っていいし、品質・コスト・納期などの項目で絞ってもいいでしょう。見る範囲を限定することでより改善のイメージが具体的になるので、ネタが出やすくなります。
「めんどくさい」業務について考えてみる
普段仕事で面倒くさい、楽をしたいと感じている人ほど、より良い改善提案を生み出す可能性を秘めています。毎日の仕事で面倒と感じることをピックアップしてみましょう。
多くの人はちょっとした不便であれば受け入れて対応してしまいがちです。しかし、なんとなく感じている「めんどくさい」は業務にも影響を与えます。
例えば手書きしなければいけない書類が自動化できないか、使う場所と置き場所が離れた道具はまとめられないかを考えてみてください。動きたくない、手間をかけたくないといった気持ちが改善提案のカギになります。
作業手順を書き出してみる
改善するための課題が見つからない時には、業務の作業手順やフローチャートを書き出してみます。詳細に書き出してみると業務が可視化しやすくなります。
可視化して振り返ることで細かな課題に気がついたり、大局的な見地で業務を把握したりできるでしょう。また、自分以外の作業手順を見ることも課題発見のヒントになるはずです。
社員の日報の中から探してみる
社員が日々記入している日報にも改善提案のネタは詰まっています。
日報に書かれている社員の悩みから、会社として改善するべき点を抽出することもできるのではないでしょうか。
自分では気づかない社内の改善点を、同僚が発見しているかもしれません。
部下から上司に提出する一般的な日報もそうですが、全社員で共有できる日報だと、部署外の社員の状況も把握することができるので、全社単位で改善するべき課題もより把握しやすくなります。
改善提案書の書き方と例文
改善提案書は必要な形式もあります。改善提案書の項目は改善のために必要な考え方を体系的にまとめたもの。なかなか内容が思いつかないという人も項目に従って記入することによって考えがまとまります。改善提案書の書き方や例文をまとめました。
改善提案書に必要な項目
改善提案書は業種や企業によって内容が違います。またすでにテンプレートが用意されている場合もあるでしょう。ここでは改善提案書に必要な項目を紹介します。
現状の問題点
まずどのような課題があるのかを指摘します。問題を指摘するだけでなく、どのような損害があるのか、どういった条件で起きるのかできるだけ具体的に記載しましょう。
問題点の改善方法
問題点を改善するためにできる具体的な行動案や改善策を提示してください。努力する、注意するといった曖昧なものではなく、具体的に実行できるものを記載するようにしましょう。
改善に必要なコストや労力
改善策にコストがかかる場合にはそれも記載します。例えば備品や消耗品を購入する場合は概算でも見積もりや購入先を書いてください。改善に必要な人員や所要時間についても忘れないようにします。
業務改善の数値目標
改善策によってどのような効果が見込めるのか数値目標で記載します。例えば1時間当たりの処理件数の増加やコストの削減の目標値を定めてください。
実施スケジュール
すぐに実施が予定されている場合には、実施スケジュールも記載します。キッチリ書くよりもある程度余裕をもってスケジューリングします。上司や同僚の意見も聞いてリスケジュールすることも考えておきましょう。
改善提案書の例文
改善提案書にはいろいろな様式があります。ここでは、上記の項目に沿って改善提案書のサンプルを紹介しています。
【当社商品プロモーション改善に関する改善提案書】 ○月○日 営業企画部 ○山 ○夫■現状の問題点 他社商品で新機能を搭載されたモデルが発売されたにもかかわらず、当社商品は発売からモデルチェンジがなく消費者への訴求が難しい。■問題点の改善方法 お寄せいただいている「お客さまからの声」を参考にプロモーションや新しい使い方を提案する営業をスタートする。■改善に必要なコストや労力 「お客さまからの声」を社内イントラにて共有。新しいプロモーションプランの策定。 ■業務改善の数値目標 ■実施スケジュール |
業務・職種別改善提案の例
改善提案に求められる内容は、その職種や業務内容によって違います。業務や職種別に改善提案の例を紹介します。
工場
【当社商品発送時梱包材のコストカットに関する改善提案書】
○月○日
○○第二工場
○山 ○夫
■現状の問題点
当社商品である工具を発送する際に工具の形状や大きさに合わせて梱包材を使用しています。カットして使うことができるため、作業性が高く便利な梱包材ですが、コストが高く発送にかかる費用が大きくなってしまいます。
■問題点の改善方法
今まで使っていた梱包材を事前に工具に合わせた大きさにカットしておいた段ボールに変更しました。梱包材料費がコストカットされ、1梱包当たりの差額は50円です。
■改善に必要なコストや労力
段ボールを用意する時間が1週間に5時間程度かかりますが、人員一人で用意できること、運用コストをトータルで比較した結果、段ボールをカットしたほうがコストカットになると判断しました。
■業務改善の数値目標
前年度の7月製品売上に対して掛かった梱包材料費は35万円でした。この削減によって5万円の削減を目指します。
■実施スケジュール
段ボール資材も豊富にあるため、この改善提案が承認されればすぐにスタートしたいと考えています。
物流
【ピッキング方式のマッチングを使った改善提案書】
○月○日
○○物流センター
○山 ○夫
■現状の問題点
トータルピッキング(種まき方式)を採用しているが、小口商品の扱いが増加。小口商品が増えたことで作業スペースが少なくなって、作業しにくくなっている。注文を集約してから仕分けする方法では、出荷先が少ない場合には問題ないが今後対応が難しくなると予想される。
■問題点の改善方法
シングルピッキング(摘み取り方式)を採用。初めから顧客の注文別にピッキングすることによって、多品種に対応。作業スペースの問題も解決できる。
■改善に必要なコストや労力
シングルピッキングにするための配置や動線の選定と実際の商品の移動。
■業務改善の数値目標
作業時間を20%削減。
■実施スケジュール
物流センターの営業日に合わせて実施可能日を選定する。
建築
【コンクリート注入時のマーキングに関する改善提案書】
○月○日
施工管理部門
○山 ○夫
■現状の問題点
コンクリート背面の注入時に注入箇所がわかりにくく、作業効率が悪化している。誰にでもわかりやすくマーキングするための型が必要である。
■問題点の改善方法
クリアファイルをマーキング用に切り抜いてスプレーにより施行箇所を示す。
■改善に必要なコストや労力
クリアファイルは1枚20円で購入可能。古くなってきた場合や汚れた場合には破棄しても負担は少ない。
■業務改善の数値目標
作業効率、視認性の向上。
■実施スケジュール
すでに実施済。
事務
【重要度別に業務の基準を変更する改善提案書】
○月○日
総務部
○山 ○夫
■現状の問題点
資料や書類作成と責任者によるチェックに時間がかかりすぎています。現状、社外に出す資料や社内限の資料を同じプロセスで作成しているが、社外向けの資料の基準と社内向け資料の基準を分けることで作業を減らしよりスピーディーに社内に情報を提供したいと考えます。
■問題点の改善方法
資料の提出先や目的によって重要度を分類します。
■改善に必要なコストや労力
重要度の分類についてマニュアルを策定します。
■業務改善の数値目標
比較的重要度が低い社内限資料に関しては、作成から共有までを当日内に完結したいと考えます。
■実施スケジュール
7月ミーティングの議題として、重要度の分類について話し合いを予定しております。
経理
【社内経費支払いに関する改善提案書】
○月○日
経理部
○山 ○夫
■現状の問題点
従業員からの経費精算が月に何度も発生して、現金精算のために手間と人件費がかかっている。
■問題点の改善方法
現金精算を月末にまとめて行うことにする。社員ごとに精算表を作成してもらって立替分は給与振込口座に振り込む。
■改善に必要なコストや労力
精算表の作成と振込手続きが必要だが、振込によって現金精算がなくなること、精算表を使ってまとめて仕訳をすることによって、全体の事務コストは削減可能と考える。
■業務改善の数値目標
残業時間を前年比より10%削減。
銀行からの引き出しや小口現金を管理するための金庫も不要になる。
■実施スケジュール
7月より実施を予定。
営業
【社内SNSを活用して営業報告オンライン化する改善提案書】
○月○日
第二営業部
○山 ○夫
■現状の問題点
現在手書きの日報や伝言メモを使って、営業報告をおこなっている。しかし、報告のために帰社したり、営業訪問の都度報告したりしていては効率が悪い。
■問題点の改善方法
社内SNSや日報アプリを活用して、帰社することなく営業報告や進捗報告ができるようにする。
■改善に必要なコストや労力
社内SNSや日報アプリの導入と運用費用。
■業務改善の数値目標
オンラインで報告することによって、業務効率の上昇が期待できる。報告ために帰社したり、報告者を待ったりする時間も不要にする。
■実施スケジュール
社内SNSや日報アプリの見積もりを今期中に取って比較検討したいと考える。
企業の改善提案まとめ
改善提案は新しいものばかりではありません。今までやってきた業務内容をもう一度振り返ってみたり、本当に無駄かないか見つめなおしたりすることで発見が生まれます。
改善提案は現在あるツールを活用するだけでなく、サービスやツールを活用したものもたくさんあります。同業他社でどのような改善提案がおこなわれているのか調べてみましょう。
また、改善提案が気軽にできる環境づくりも大切です。せっかくいいネタを思いついても、改善提案がしにくい環境だと結局発言しないまま終わってしまうこともあります。
弊社が提供する日報管理システム「nanoty」は、情報共有やコミュニケーションの活性化を促すツールで、改善提案しやすい環境づくりにも役立ちます。
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